魂の骨格 第32回 VSシリーズゴジラ特技監督 川北紘一 × S.H.MonsterArts原型制作 酒井ゆうじ ~撮影現場の思い出編~
2011-11-10 00:00 更新
いよいよ、2011年11月19日(土)に発売されるアクションフィギュアの新シリーズ、S.H.MonsterArts ゴジラ。今回ラインナップされているのは、『ゴジラVSビオランテ』(91年)から『ゴジラVSデストロイア』(95年)までの、“平成VSシリーズゴジラ”に登場したゴジラだ。
原型を担当したのは、ゴジラ造形の第一人者・酒井ゆうじさん。そして、そのフィギュアを使って、VSシリーズゴジラの特撮を全て手がけた川北紘一監督がプロモーションムービーを撮ったことも大きなトピックだ。
今回は発売を記念して、お二人の対談を2回に分けて、たっぷりとお楽しみ頂こう。
■出会いは『ヤマトタケル』から
──まずは、お二人の出会いからお聞かせください。
川北 あれは、たしか『ヤマトタケル』の時だよね。
酒井 ええ、そうですね、1994年です。
ある日、突然川北監督からお電話を頂いて。それが、映画に出てくるヤマタノオロチの検討用雛形のご依頼だったんです。
川北 うん、そうだったそうだった。
酒井 それで「いつまででしょうか?」と聞いたら、なんと「明日欲しい」と(笑)。
川北 それで、実際次の日に、撮影中のスタッフルームに持ってきてくれたんだよね(笑)。
今までの雛形と違ってむちゃくちゃデカかったんだけど、ヤマタノオロチのボリューム感や全体のフォルムがそれで掴めたんだ。
酒井さんの造形は、細かいディテールは勿論なんだけど、特に全体のフォルムを大事にされるんで、ダイナミックな感じが伝わってきて、すごくよかった。デザインって、紙に描いた2Dで考えていてもどうしても限界があって、立体に起こすことで新しい発見があるものなんだ。
そういう意味で、お願いした甲斐があったな。
酒井 ありがとうございます。
川北 当時は、『ヤマトタケル』と『ゴジラVSスペースゴジラ』の準備を同時に進めていたの。そういう時は、人が足りなくなるから、酒井さんにとってはいいチャンスだったんだよね。
■思い出の作品、『ゴジラVSデストロイア』
──『ゴジラVSデストロイア』では、造形スタッフとして、酒井さんも映画に参加されていますね。
酒井 『ヤマトタケル』以降、東宝映像美術さんと交流が続いていて「是非、撮影に参加したい!」と熱い思いでアプローチしていたんです。そうしたら、またある日突然、ゴジラの造形をされていた小林知己さんから電話を頂いて「明日、来れるか?」って(笑)。
さすがに2日後にして頂いたんですが、初日から大プールの撮影現場でゴジラスーツの脱ぎ着の世話をすることになりました。
その後、陸用ゴジラの造形に参加させて頂いたんですよ。可能な限り、造形の仕事をさせるからと言ってくださって。
ゴジラジュニアのスーツや1/2サイズモデルの造形もしています。ゴジラジュニアのスーツは、背ビレの配列もやらせて頂いたんですよ。川北監督にチェックして頂いたのを覚えています。
川北 あの時は、ゴジラが発光することもあって造形も大変だったからね。
造形部も助かったんじゃないかな。
酒井 撮影現場では、川北監督に怒られたこともありました。ゴジラに付いてスーツの世話をしていたんですが、本番が始まる時に、カメラのフレームの中に残ってしまったんですよ。
それで、「何やってんだ!」って怒られて。
川北 そんなことあったっけな(笑)。 あの時のゴジラは、電飾や炭酸ガスの仕掛けも入っていて、一番大変だったんだよね。仕掛けのコードが尻尾からズラーッと伸びていて、コードを裁くだけでも大変だったの。
酒井 右から撮影する時は、コードを全部ゴジラの尻尾の左側に隠して。カットが変わる度にコードの位置を変えながら撮影してましたよね。
川北 そうそう。ゴジラに入っていた薩摩(剣八郎)さんも、ガス吸って酸欠で倒れちゃったしね。
酒井 でも、そうやって苦労して撮った生の迫力は、画面に出てますよね。あの時は、真っ黒になりながら、目の前の仕事を一生懸命やってました。でも、嬉しかったですよね、ゴジラのスーツを間近で触れるわけですから。本当に、いい経験でした。
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★ 次回は、「ゴジラ造形」と「川北監督によるプロモーションムービー」についての対談を、ガッツリお届けします!
川北紘一 (かわきた こういち)
1942年生まれ / 東京都出身
『ウルトラマンA』(72年)で特技監督デビュー。『さよならジュピター』(84年)や『ガンヘッド』(89年)をはじめ、『ゴジラVSビオランテ』(89年)から『モスラ2 海底の大決戦』(97年)までの東宝怪獣映画の特技監督を務める。2003年に制作プロダクション「ドリーム・プラネット・ジャパン」を設立。『超星神グランセイザー』(03年)に始まる「超星神シリーズ」の特撮や『Kawaii! JeNny』などの演出を手がけている。
酒井ゆうじ (さかい ゆうじ)
1958年生まれ / 福島県須賀川市出身
特にゴジラにこだわって、ガレージキットの原型を多く手がけており、各ゴジラの造形の違いを忠実に再現し、さらに生物感溢れるその造形には、国内外に多くのファンがいる。『ゴジラ2000ミレニアム』(99年)では、新世紀ゴジラの雛形モデルも造形した。「ゴジラ名鑑」をきっかけに、バンダイ・キャンディ事業部製品の原型制作も手がける。