魂の骨格 第29回 造形師 竹谷隆之 & 藤岡ユキオ(後編)
2011-09-07 00:00 更新
原型師独自のイマジネーションによるデザインラインや、ハイレベルな技術に裏打ちされた造形美を融合させることで、日本のキャラクターフィギュア界に新風を吹き込んだブランド「S.I.C.(Super Imaginative Chogokin)」。今回の魂の骨格では、前回に続いて造形師・竹谷隆之氏と藤岡ユキオ氏のお二方をお招きし、2011年11月、12月、ラインナップに加わるスカイライダーと仮面ライダースーパー1、さらにはファン待望の仮面ライダーZX(ゼクロス)の商品化について語って頂いた。
■ S.I.C. 最新作・スカイライダーとスーパー1
──「S.I.C. 匠魂」では実力派の原型師が多数参加されていましたが、割り振りはどのように決定しているのですか?
竹谷 やはり皆さんそれぞれに得意分野がありますので、基本的にはキャラクターのデザインや雰囲気を見て「筋肉系のキャラだったら、谷口(順一)くんだろう」という感じで、得意そうな人に振り分けるようにしています。
藤岡くんの場合は守備範囲が広いので、「どれでもOK」という感じなんですけど。
藤岡くんには、2011年11月・12月に連続リリースされるスカイとスーパー1の造形を、基本的に一人で担当してもらっています。
シリーズ立ち上げの頃は、バンダイを含めた関係者も「スカイやスーパー1までは出ないだろう」って思っていたんですけど……そう考えると、感慨深いですね。
藤岡 僕の場合、リアルタイムで観た仮面ライダーは『BLACK』以降なんです。だからそれ以前の作品であるスカイライダーやスーパー1に関しては、よく分かっていない部分もあるのかも知れません。 でもその方が客観的に見ることが出来て、結果的には良い場合もあったりするんですよね。作品やキャラクターへの愛情が強過ぎると、アレンジを加え難くなったりもしますから。
竹谷 今回僕は藤岡くんの作業を横で見ているだけで、基本的には全てお任せしています。通常だとあと一人か二人加えて共同作業でやっていくところなのですが、一人でやった方が良いという部分もありますしね。
──スカイライダーとスーパー1のデザインで苦心した部分は?
竹谷 スカイライダーは元々仮面ライダー1号をイメージしたデザインなので、「仮面ライダー1号に見えるように」というコンセプトは絶対に外さないように心掛けました。腰の重力低減装置は、アクションの都合もあったのでしょうが元のデザインが小さめで地味だったので、もっと大きくした方が立体物としては分かりやすいし、キャラクターの特長にも繋がると考えました。前期のカラーリングを選んだのは、「やはり初登場時のイメージを大事にしたい」という意味の他に、個人的に暗い色味の方が好きだからというのもあります(笑)。 後期版のスーツも腕の部分が革っぽい質感で、あれはあれで好きなんですけどね。まだ何も決まってませんけど、後で後期版が出るかも知れませんし……(笑)。
スーパー1に関しては、スズメバチをモチーフにしているなどの根幹の部分を大切にしつつ、素直に強調する方向でデザインしています。具体的には、元のデザインでは『V』の意匠が身体のあちこちに入っているので、腕のラインも『V』を連続させることで表現しました。またスーパー1を象徴する武器と言えばファイブ・ハンドですが、テレビ版を忠実に再現しても単に色違いの手袋になってしまい、それでは今のユーザーには喜ばれないだろうということで、今回はやむなくアレンジしています(笑)。手袋のフリンジを鎖で表現したスーパーハンドや強さを強調したパワーハンドも、おかげ様でファンには好評のようです。
藤岡 ちなみに今回、マフラーパーツには2体ともクリア素材を使用しています。不透明だと、見た目がどうしても重たい感じになってしまうんですね。実際のスーツに使用されるマフラーにも、透ける素材を使っているものがありますし。
■ さらにファン待望のZX(ゼクロス)も!?
── こうなると、仮面ライダーZX(ゼクロス)の立体化についての期待も高まるのですが…
竹谷 ZX(ゼクロス)はボディが左右非対称というデザイン上の特徴を活かすためにも、細かいラインも含めて元デザインの要素は出来る限り残そうと考えています。
“忍者ライダー”という設定も極力膨らませたいのですが……
元デザインが黒装束というわけでもないので、これは見た目のデザインではなく小道具やギミックで表現するしかないでしょうね。
例えば十字手裏剣やマイクロチェーン、電磁ナイフなどのZX(ゼクロス)を象徴する武器を充実させた方が、コンセプト的には合うのかなと。
■ 原型師が望む、S.I.C.今後のラインナップとは
── ZX(ゼクロス)が揃うと、遂に『10人ライダー』が勢揃いするわけですが、これを機に改めてリメイクしてみたいアイテムは?
竹谷 ライダーに限らずキカイダー系もそうですけど、初期にリリースしたアイテムについては「当時はああいう形に落ち着いたけど、アレンジを変えて今の技術で一から作ったらどうなるんだろう」とは思いますね。
新しいアイディアも色々出て来る気がしますし、特にキカイダーやハカイダーにはチャレンジしてみたい気がします。
ただ、それが今ファンの皆さんに求められていることなのかと考えると……まあ、今後そういうお話があればということで(笑)。
── 「S.I.C.」シリーズで今後リリースしたいキャラクターは?
藤岡 「変身忍者嵐」も含めて、いろいろな作品のキャラクターがかなり立体化されていますし……。
竹谷 石ノ森作品で手を付けていないものとなると「サイボーグ009」くらいしか残っていないんでしょうけど……。
でもあれは石ノ森先生が描かれたあの顔があってのものだし、アレンジすると全く違なるものになってしまいそうですね。
例えば映画だったら、アメコミを上手く実写化した「X-MEN」のようなやり方もあると思うんですけど、立体物となると難しい。ジェットの鼻はどうするんだ、とか(笑)。
竹谷隆之 (たけや たかゆき)
12月10日生まれ / 北海道出身
専門学校卒業後、月刊モデルアートの編集を経てフリーの造形師に。専門学校の先輩である雨宮慶太の映画『未来忍者』に造形美術として参加し、以後『牙狼<GARO>』を始めとする雨宮作品のスタッフとして活躍。造形師としては「S.I.C.」を始めとする人気シリーズを多数手掛ける他、オリジナル作品集『漁師の角度』も発表。高次元の造形力と、独自のデザイン力で知られる。
藤岡ユキオ (ふじおか ゆきお)
6月6日生まれ / 愛知県名古屋市出身
代々木アニメーション学院 SFX特撮科在学中に、講師であったMAX渡辺氏に竹谷隆之氏を紹介され、竹谷氏の造形を手伝うようになる。ゼイラム2やマガラガなどのフィギュアの造形を手掛けたのち、現在はS.I.C.シリーズや牙狼のフィギュアの造形を手掛けている。